脳卒中で片麻痺になると急性期の治療を終え、次に回復期といわれる段階に入る。いよいよリハビリが始まるわけだが、麻痺した体を動かすのは容易なことではない。だいたい気分がすごく落ち込んでヤル気が起きないのである。医師からは完全に治ることはない。後はリハビリで日常生活ができる程度になる人は多いですからリハビリを頑張ってください。そういって書類とともに次の工程へと送られる。


ナースに車椅子を押されて連れていかれたのが、リハビリ室と書かれた部屋である。そこには白い上下の服を着た人が数人いて、高齢者相手に幼児言葉さながらに対応し、「危ないから気を付けてネ」などの会話が聞こえたりする。患者の年齢は高く、まれに若い人の姿も見られるが、ほぼ高齢者と言っても差し支えないのが、脳卒中リハビリ室の風景である。

白い上下の服を着た人は、何やら老人の足をつかんでは屈伸をさせながら「はい、ゆっくり足を蹴ってみてください」とか「今度は足を引いてみてください」とか声掛けをしている。白い服を来た人は、昔は、鍼打ちの先生かマッサージさんと間違われることもあったが、今はリハビリの先生だということぐらいは知られている。彼らの事はPT(理学療法士)PT(作業療法士)という。医師ではないが専門学校を出て国家試験に合格した人たちである。

他に、ST(言語療法士)心理療法士と呼ばれる人がいて、失語症の訓練やメンタルケアーなどを行っている。一度壊れてしまった脳細胞はどんな薬を飲んでも治らないし、もちろん外科手術でも治らない。近年はボトックス注射といってポツリヌス菌というものを筋肉に注射することで突っ張りをなくす。と言われていて、一時は盛況を極めたが、今は話題にすらならなくなった。

代わりに登場したのが再生医療という概念だ。山中伸弥教授のIPS細胞などが有名である。新しい細胞を作り出すとかで、脳細胞の再生も可能ではないかと言われている。他の臓器はいざしらず脳細胞の再生にたとえ成功したところで、所詮画餅の域をでないだろう。絵に描いた餅は食えないのである。

壊れた脳細胞が復活したところで、運動神経のシステムが元に戻ることにはならないと思う。なぜなら体の運動機能は、体全体の神経システムが関与しているからである。関節、筋、筋肉、知覚神経などなど。体全体が密接に影響しあって、人間の運動がなりたっているからだ。壊れた脳細胞だけの問題ではない。正常な脳細胞だって影響している。


たとえ脳細胞を元に戻したところで、リハビリ訓練を継続せねばならないことには変わりがない。ボトックスがその良い例である。一時的に緊張はなくなっても薬の効果が切れると元の木阿弥である。永遠に高価な治療費の負担が待っている。

じゃあ、どうすればよいのかということになる。運動療法しかない。真理は不変である。今も昔も変わらない。運動こそ脳神経ネットワークの構築に欠かせない。だからどの病院に行っても運動療法を主体としている。しかし、この運動療法というのは結果が出るまで恐ろしく時間がかかるし、疲労感も半端ない。

アメリカの海兵隊の訓練のように厳しいリハビリを遂行するにはどうするのか。ここはPTやOTなどの専門家の出番である。しかし、彼らは健常者である。自分で麻痺を体験したこともなければ治したこともない。あるのは本で得た知識だけだ。半年のリハビリを指導できるぐらいである。トイレに一人で行けるぐらいになれば病院リハビリは成功と言える。



さらに次のステップへと進むわけだが、麻痺が固まると、もう専門家もへったくれもない。本人のヤル気が全てである。学歴も地位も名声も、金がいくらあってもどうにもならない。やったもん勝ちの世界である。本人が「俺はやるぞ!」とエンジンがかからなければ話は一歩も進まない。

ヤル気になるには呼び水が人用だ。それは希望である。あいつがやったんなら俺にだってできるさ。そう思うことだ。アナタだってきっとデキル。

全てはアナタのヤル気しだいにかかっている。苦しいときもある。泣きたいときもあるだろう。しかし、そこでサジを投げてはイケナイ。雨だれが長い歳月をかけて石に穴をあけるように頑張るしかない。

<脳卒中の原因は>

ほとんどがレンズ核洗条体動脈領域だと言われている。



細い血管の一部に微小動脈瘤と言われる瘤ができて、破裂したり詰まったりすることで脳出血や脳梗塞になる。
    正常                 瘤ができてる
 

哺乳類で脳卒中にかかるのは人間だけという事が最近の研究で分かったそうだ。そういわれれば猿とか犬とか猫とかが脳卒中になったのを見たことない。そのことはずっと不思議に思っていたのだが、その原因がNスペを見てわかった。脳の血管が心臓などの他の血管に比べて壁が薄いというのだ。つまり脳の血管が他と比べてモロいということだ。

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